研究概要 |
海洋産天然有機化合物には地上植物の成分には類を見ない特徴ある構造を持つものが数多く存在する。その中には光や酸などに不安定なポリエン化合物が多く見受けられる。これらのポリエンおよびポリエンをもとに生成したと考えられる環状テルペノイド類には強力でかつユニークな生理活性作用を有するものが多い。本研究ではこれら海洋産のポリエンテルペノイド類を合成するため、その原料と考えられる三置換ヨードジエン類の一般合成法を確立することが出来た。そしてこれを用いて海洋産フラノテルペノイドであるデヒドロデンドロラシンおよびイルシニアニンの合成を行った。 (1)三置換ヨードジエンの合成は共役末端アセチレン(エンイン)から変換して行った。エンインに対してまずMeMgSnBu^n_3を付加させ、得られるsyn-ジメタロジエンを親電子試剤と反応させることにより2-置換-1-スタニル-1、3-ジエンに導いた。そして、これを直ちに無水条件下よう素を作用させ目的の2位置換1-ヨードジエンに変換した。 (2)つぎにこうして得られる2位置換ヨードジエンの有用性を二種類の海洋産テルペノイドを合成することにより明らかにした。 デヒドロデンドロラシンはフラン環とトリエンを持つ光に不安定なテルペノイドであり、上記に示したヨードジエンの合成法を用い、E-5-(3-furano)-3-penten-1-yneを中間原料に5-(3-furano)-1-iodo-2-methyl-1,3-dieneのE,E体を立体特異的に合成することに成功し、これを原料にメチルブテニルホウ酸とカップリングさせて目的のデヒドロデンドロラシンの合成を完成することが出来た。 一方、イルシニアニンは海綿、the genus Iruciniaから単離されたセスタテルペンであり強力な抗腫瘍活性と抗心筋収縮作用を有する。このイルシニアニンのメチルエーテルを5-(3-furano)pentyneより11段階で合成することに成功した。
|