研究概要 |
水は溶媒および溶質として複雑多岐にわたる反応性を示す。水の塩基性度と酸性度は溶液中における水の溶存する分子形態(二量体、三量体、溶媒和した水分子など)によって変化することが指摘されてきたが、実験からの検証はほとんどない。そこで本研究ではIR、NMR法によって種々の溶媒中の水の溶存状態を定量的に把握し、水の配位に対して選択性のある大環状平面錯体、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンニッケル(II)〔Ni(tmc)〕^<2+>のソルバトクロミズムを利用して水のキャラクタリゼーションを行なった。 ドナー溶媒‐ニトロベンゼン混合溶媒系中の水: ドナー溶媒としてピリジン誘導体、ジメチルスルホキシドを用い、水(W)とドナー溶媒(S)との1:1水素結合種(WS)のみが存在するドナー溶媒の濃度範囲を決定した。この混合溶媒中の〔Ni(tmc)〕^<2+>のソルバトクロミズムの平衡解析から得た知見は次の通りである。イ)、水はドナー溶媒と水素結合することにより塩基性(配位能)が高くなる。そしてSの塩基性度が高い程その効果は大きい。ロ)、〔Ni(tmc)WS〕^<2+>の水分子の水素結合していない水素の水素結合供与性はWSの錯体への配位定数が大きい程大きくなり、バルクに存在しないWS‐Sが配位した錯体〔Ni(tmc)WS‐S〕^<2+>が形成される。 Aerosol‐OT(ACT)逆ミセル中の水: 濃度比R(=〔H_2O〕/〔AOT〕)が10以上の場合は、〔Ni(fmc)〕^<2+>はバルク水溶液中と同じスペクトルを示したがRが10以下次第に小さくなるとともに4配位錯体が減少し、水が配位したら配位錯体のピークは長波長にシフトした。そしてOH^‐が配位した錯体のスペクトルに漸近することを見い出した。このことからRが小さくなると〔Ni(tmc)〕^<2+>とAOTのスルホ基との協同的な分極効果によって、配位した水分子がよりOH^‐イオンに類似した形に分極すると考えられた。
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