研究概要 |
クロマトグラフィの分離プロセスは,基本的には分配,拡散等の現象を応用したものであるが,その分離特性は事実上カラムの性質によって固定されている.ここで,開発した方法は電場制御型のクロマトグラフィであり,クロマトグラフ分析法に新たな制御パラメーターと自由度を与えることを目的とした.この方法では,多孔質カーボン粉末を充填したVYCORガラス管を電極カラムとして使用する.今回の計画では,本法実用化への基礎研究を行った. (1)充填材表面の化学修飾による分離能の向上 充填材として多孔質グラッシーカーボン粒子を用い,アルカリ金属間の分離には,ほぼ成功した.さらに分離能の向上をめざし,イオン交換体としてクラウンエーテル,伝導性ポリマーなどの表面修飾を試みた.クラウンエーテルを修飾した場合には,金属イオンの電位制御分離が可能であった.この場合,充填剤電位が正のときはアルカリイオンは分離しなかったが,電位を負にするにつれ保持時間が増大し,分離度も向上した.電導性ポリマーとしてポリアニリンを用いたときは,電位を正にすると分離度が向上した.これはポリマーが酸化されることによりカチオン性サイトがポリマー内に生成するためであると考えられる.ハロゲンイオンに対する保持時間の電位依存性はこのイオンとポリマー内に存在する過塩素酸イオンとの交換反応によって説明することができた. (2)カラム制御電位のプログラムによる分析機能の多様化 本法の大きな特長は,カラム電位を制御因子として利用できることである.たとえば,溶離しにくい陽イオンの場合には,電位を正にして保持時間を短縮できた.電位の制御は簡単に行うことができ,この電位をプログラムすることにより,より多機能な分析が可能であることを示した.
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