研究概要 |
1. かさ高い第2級シランとして,メシチル基,2,4,6‐トリイソプロピルフェニル基,2,6‐ジイソプロピルフェノキシル基,2,6‐ジ‐t‐ブチルフェノキシル基およびトリ‐t‐ブチルメトキシル基の5種類の官能基をそれぞれ2個ずつ持つシランを合成し,これらと種々の遷移金属錯体との反応を試みた。鉄カルボニル錯体との反応では,最初の3つの置換基を持つシランの場合にはシリレン架橋オクタカルボニル二鉄錯体が中程度の収率で得られた。これは,このタイプの錯体を結晶として単離し,構造決定した最初の例である。しかし,さらにかさ高い後の2つの置換基を持つシランは鉄カルボニル錯体と反応せず,シランはほぼ完全に回収された。一方,よりイオン半径の大きい白金のホスフィン錯体とは,かさ高い後の2つの置換基を持つシランでも反応し,Si-H結合で酸化的付加した平面四角形錯体を与えた。以上の結果から,反応が進行するかどうかや反応の経路は,かさ高い置換基の立体効果を強く受けることがわかった。 2. ビス(2,4,6‐トリイソプロピルフェニル)シランと(η5-C_5H_5)-Fe(CO)_2SiMe_3との光反応により合成した,シリレン架橋錯体としては初めての常磁性錯体について固体の磁化率を測定し,固体でも10K〜室温の温度範囲で三重項基底状態をとっていることを明らかにした。 3. t‐ブチルシランまたはt‐ブチルシリル基を持つ鉄,ルテニウム錯体を原料として,シリレン架橋二核錯体として金属中心がFeFeのものの他にFeRuおよびRuRuのものを新たに合成した。また,ホスフィンなどの電子供与性配位子を含む誘導体も幾つか合成した。各種分光学的研究から,これらの錯体の2つの金属および架橋ケイ素部分はかなり電子豊富になっており,カチオン性シリリン架橋錯体の前駆体として適していることがわかった。
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