研究概要 |
配位原子にアルキルペンダントをもつ金属錯体を合成し,その特性について次のことを明らかにすることができた. 第一は,エチレンジアミンにアルキルペンダントをつけたN-エチルエチレンジアミンとN-ベンジルエチレンジアミンとのテトラシアノ,テトラアンミンコバルト(III)錯体のN-エチル基,ベンジル基はキレート環に対して擬エクアトリアルに配向しanti構造をとった.これらとbpyまたはphenと白金(II)三元錯体を構築し,N-ベンジルは擬アクシャルに配向し,溶液中で分子内芳香環の間で疎水性相互作用がみられた.さらに,アルキル基の芳香環の数を増やした N-ナフチルメチル基,N-アンスリルメチル基をもつ白金(II)錯体では溶液中,結晶中のいずれでも-syn構造をとり,分子力場計算によってもこの構造が支持され,芳香環の間の相互作用が増強された.また,濃度依存性から分子間スタッキングについても評価した.この分子内疎水性相互作用は無極性溶媒によって弱められ,尿素などタンパク質変性剤も同様の効果をもつことがわかった. 第二は,合成したシアノ鉄(II)錯体の脱水素反応について速度論及び電気化学的測定から調べ,N-アルキル化によって著しく反応性が高まることを利用し,N-ベンジルエチレンジアミン錯体では遂次的に脱水素されモノイミン,ジイミンになることがわかり,はじめてモノイミン錯体を単離できた. 第三は,bpyと架橋メチレン鎖長nを1〜5としたN-ω-フェニルアルキルエチレンジアミンとの白金(II)三元錯体を合成し,分子内相互作用はn=1のとき最も強くみられ,さらに種々の芳香族スルホン酸と白金(II)三元錯体の間で分子間疎水性相互作用がn=3のとき強くみられることを明らかにできた.
|