研究課題/領域番号 |
04640593
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
遺伝学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮下 直彦 京都大学, 農学部, 助教授 (20212243)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1993年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1992年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | パンコムギ / 分子集団遺伝学 / 倍数性進化 / 種内変異 / エギロプス属シトプシス節 / 系統関係 / RFLP / パンコムギ祖先野生種 / RFLP解析 / 系統樹 / 葉緑体 |
研究概要 |
世界の最重要穀類パンコムギ(Triticum aestivum:AABBDDゲノム)が2倍性のタルホコムギ(Aegilops squarrosa:DD)と4倍性のマカロニコムギ(T.durum:AABB)との異種倍数化によって誕生したことは良く知られている。さらに4倍性のマカロニコムギの成立も2倍性野生種のT.urartu(AA)とクサビコムギAe.speltoides(SS)との異種倍数化によると考えられている。このように、パンコムギの倍数性進化の過程は植物遺伝学の分野において最もよく解析されたものの一つであるが、これらの研究を行なう際にそれぞれの種の種内変異が考慮されたことはあまりない。我々はコムギ集団遺伝学の第一歩として種内変異を推定するとともに、パンコムギの倍数性進化に関する新知見を得るために、11kbの葉緑体遺伝子領域の制限地図多型現象を解析した。2倍性野生種Ae.speltoidesと4倍性野生種T.dicoccoides(AABB)およびT.araraticum(AAGG)を主たる材料とした。13種類の4カッター酵素を用い、250以上の制限部位を記録したが、Ae.speltoidesにおいてのみ多型的な制限部位を検出した。ヌクレオチドあたりの変異量はθ=0.00085及びπ=0.0006と推定され、葉緑体ゲノムの変異量が他の植物と同様に極めて低いことが確認された。しかし、葉緑体ゲノムが半数性であり母系遺伝に従うことを考慮すると、この推定値はショウジョウバエの核遺伝子領域のものに匹敵する。また、挿入・欠失多型は種特異的かつ種内では単一的であった。パンコムギの倍数性進化についての新知見として、1)種内変異を考慮し系統樹を作成したところ、Ae.speltoidesがパンコムギのBゲノム提供親である、2)調べられ4倍性種2種は単一起源ではなく、違う時期に極めて遺伝的に近縁な固体を母親として誕生した、3)高次倍数種にはヌクレオチド変異はなく、高次倍数種は多分1個体の母系祖先種から生じたなどの結果が得られた。また、エギロプス属シトプシス節に属する5種の種内変異と系統関係を核ランダム・クローンを用いたRFLP解析によって調べた。Ae.speltoidesの種内変異量のレベルは他の4種の種間の違いに相当するほど高いが、他の4種においては種内変異は極めて低いことが明らかになった。しかし、種間の分化の程度はシトプシス節のいずれの種の間についてもほぼ同じであった。RFLP解析によって得られたこれら5種に関する系統関係は従来の形態に基づく分類と一致しており、トンカータ亜節のAe.speltoidesとエマ-ギナ-タ亜節に属する他の4種とに大きく分けられた。また、この分類は葉緑体ゲノムのRFLP解析による分類とも類似しており、核と細胞質オルガネラが協調的に進化していることを示唆する。
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