研究概要 |
1.環境傾度上の種交代率の研究方法を確立した。1)海抜傾度50〜100m間隔で植物社会学的調査を行う。このとき、通常の調査法よりは2倍程度大きい調査面積を採用し、全種の記録を取ることが必要である。2)現地調査終了後に組成表を作成する。3)調査地点間の海抜差のマトリクス表を作る。4)群落類似度(PS:百分率類似度、またはCC:共通係数)をすべての調査地点間について算出し、マトリクス表を作る。5)X軸に海抜差、Y軸に類似度(対数)をとった座標において、回帰直線を求める。6)直線の勾配が種平均変化率(Species Turnover Rate;STR)である。7)直線の切片は同群落類似度(Internal Association;IA)となる。 2.鳥取県の三徳山、船上山、大山のブナ林の種交代率では、全層群落、大本種(高木種と低木種)、草本種に分けて研究した。ここには類似度CCの解析結果を以下に示す。 3.三徳山ブナ林では、全層群落IA=81.8,STR=0.40^<-3>,木本種IA=85.7,STR=0.38^<-3>,草本種IA=71.1,STR=0.44^<-3>。船上山+大山ブナ林では、全層群落IA=93.3,STR=0.68^<-3>,大本種IA=100,STR=0.66^<-3>,草本種IA=85.1,STR=0.82^<-3>。 4.IAならびにSTRの両方において、三徳山より船上山+大山の方が高い値を示す。 5.STRは草本種が木本種よりも高い値。これは照葉樹林について既知の事実と符合する。 6.岩上のコケ群落についても、起点からの距離(m)を用いて同じ方法を適用した。対象は、岩崖面、洞穴側面と地面、石垣上で湿度または照度の傾度上のコケ群落である。 7.種交代率においては、STR=1.51^<-3>〜8.18^<-3>〜65.62^<-3>を示した。この数値を森林群落の数値と直接比較する事は出来ない。コケ植生連続体に関しても一層の資料集積を必要とする。
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