研究概要 |
受精後10日で成体骨片を形成して変態し,他のウニに比べてやや大型の卵(直径180um)を持つ為に,微細手術に適するという特長を持ちながら,同時に,典型的な8腕型プルテウスを形成したのち変態するスカシカシパンを用い,2細胞期にガラス針を用いて,機械的に割球を分離し,それぞれの割球の飼育を行なった。このようにして得られた双生胚のうち,ペアでプルテウスの8腕後期幼生まで成長したものは,21例あり,それらの全てが,プルテウス軸の左側にウニ原基を形成した。また,それらのうち,7ペアは変態して稚ウニを作った。Driesh(1891)は,ウニ卵を2細胞期に分離して飼育すると,いずれの割球も完全な4腕プルテウス幼生を作ることを示し,この時期までの調節能のあることを証明したが,それ以後については,言及していなかった。今回の私の研究結果は,ウニ胚分離割球の調節能力が,4腕プルテウス期を超えて,完全な稚ウニの形成にまで及ぶことを証明したものであり,秩序だった成体骨片の形成,及び,左右軸(左右極性)の調節,ならびに,その為の遺伝子発現の研究にきわめて大きな示唆を与えるものである。蛍光色素注入法を用いた,割球運命の追跡による成体骨片形成細胞の起源の決定と,第1分裂面と左右軸の関係に就いては,現在実験を進めている。また,従来,4腕プルテウス期までの骨片は,16細胞期の小割球に由来することが知られていたが,6腕,8腕の骨格を形成する細胞の起源は不明であったので,成体骨片形成細胞の起源と同様に蛍光色素注入法によって、実験中である。
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