研究概要 |
ホタルイカで発見された新しいA4視物質の光感受性は従来から知られているA1視物質と比べ感受性の極大が短波長側にあるだけでほぼ等しいことを明らかにした。A4,A2,A1視物質を持つ動物は英国海洋研究所のヂスカバリー号で採集した大西洋の多数の深海動物の中で数種のイカとタコの中に発見され、またA4,A1視物質だけをもつものも発見された。A1視物質が深海の短波長光の環境への適応として吸収極大波長を移動しているが、さらにこれを捕うものとして短波長光のためにA4視物質をまた長波長光を吸収するA2視物質を加えて三色色覚系を獲得したと考えられる。ホタルイカ網膜の視細胞の構築は入射光にたいして選択的に短波長光をまず吸収し最後に長波長光を吸収する視物質を含むものが最下層にある様になっている。この際に上の視細胞層は下層の視細胞に対して短波長を切りとるフイルターとして働き、波長識別をより有効にしていることを明らかにした。本研究で購入したインテンシファイアーによって生きたホタルイカの発光パターンを観察することが出来たので三種の皮膚発光器の動作と海水温との関係をさらに明らかに出来るみとおしがついた。さらに視細胞感桿の微細構造は明らかに偏光解析能力を示すから、この種の動物の視覚においては波長識別能力に加えて偏光解析能力が併せて働いていることが考えられるので、今後これを検討する必要がある。スルメイカのものより3倍も長いこの網膜の視細胞の特徴を利用して、初めて生のままX線解析をすることがき、視物質の存在するマイクロビライの間にイオン流の為に十分な空間があることが示された。これは電気生理学的に明らかにされている視細胞のマイクロビライでの光受容反応を無理なく理解させる事実を与えるものである。一方この深海性のホタルイカの視細胞外節は分離し易く、初めて頭足類の光受容系の脊椎動物とは全く異なるG蛋白を発見することが出来、現在さらにそれにひきつずく反応、分子種を明らかにする研究を発展させつつあり詳細は報告書や発表論文を見ていただきたい。
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