研究概要 |
1.資料が不足していた南西諸島(トカラ列島、沖縄本島、八重山諸島)に重点をおいて現地調査を行い、多数のクモ類標本を採集した。 2.国立科学博物館が行っている日本列島各地、とくに北海道、東北北陸地方の調査によって得られた標本、科研費の国際学術研究によるタイ、マレーシア、台湾、マダガスカルなどの調査によりもたらされた標本のほか同博物館が従来より所蔵している国内外各地の標本も材料に加えて、フクログモ属(フクログモ科)のクモ類の分類学的、比較形態学的研究を行った。 3.その結果、わが国から3新種Clubiona ikedai,C.kumadaorum,C.mayumiaeおよび3新記録種Clubiona kasanensis,C.trivialis,C.mandschuricaを見い出し記載した。新種はいずれも日本固有種と考えられる。 4.台湾産のフクログモについては日本の南西部のクモ相との関連を追求することがとくに重要と考えられるので、総括的に研究し4新種を含む14種を記載した。これらの半数はわが国との共通種であり、とくにcorticalis種群の割合が大きい点で八重山諸島のクモ相との関係が深い。 5.以上に従来の知見を加えて総合すると、日本列島のフクログモ属は、15種群に属する約60種から成り立ち、それらの多くはユーラシア大陸とくにシベリア、中国、朝鮮半島との共通種あるいは同地域の種と密接な系統学的関係をもった日本固有種であるが、南西諸島には南方の色彩の濃い特異な種群に属する種もみられ、わが国の動物相の複雑さの一端が垣間見られる。
|