研究概要 |
1.比較研究の基礎資料を充実させるため,各年度の主に成虫が発生する時期に主として北海道各地において調査を行い,その結果得られた資料に既存の資料を加えてヒラタハバチ科の分類と系統解析に有用な形質の検討を行った.その結果,属レベルの系統解析には,翅脈相,口器,産卵管の形態など13の形質が重要であることがわかった.これらの形質の分布を系統解析プログラムMacladeおよびPAUPに入力して形質状態分布行列を作成し,属間の系統関係および各形質の進化に関する最節約的な仮説を作成した.これによって得られた系統仮説によれば,既存の分類群のうち,ヒラタハバチ亜科およびそれを構成する2族NeurotominiおよびPamphiliiniは単系統群であるが,マツヒラタハバチ亜科およびCephalciini族は単系統群ではない.今後はさらに系統解析に有用な形質の発見に努力し,今回得られた系統仮説をテストしていきたい.また,今回系統解析の単位として使用したヒラタハバチ科各属の単系統性の問題も今後の検討課題として残されている。 2.上記の研究の過程で,明らかになった新知見の一部は10編の論文として,学会誌等に発表した.これらは,韓国産Neurotoma属(5種)およびOnycholyda属(1新種を含む6種)のまとめ(論文6),Pamphilius sulphureipes種群(2新亜種を含む東アジア産の4種)の再検討(論文8),Pamphilius histrio種群(1新種,1新亜種を含む全北区産の11種)の再検討と系統解析(論文10),東アジア産Megaxyela属(2新種を含む3種)の再検討(論文3),日本からのCephalcia属およびNeurotoma属の各1新種の記載(論文5,9),新寄主および幼虫の造巣習性に関する報告(論文1,7)ならびに新分布記録(論文2,4)である.
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