研究概要 |
フィッション・トラック年代測定値の標準化のために,現在利用可能な国内研究用原子炉,JRR-2・JRR-4・JRR-3M(以上日本原子力研究所)およびTRIGA Mark II(立教大学原子力研究所)のそれぞれの一般照射設備について,Au・Cu・Co・Lu・In・Al・Niなどをモニターとして,その照射場の特性を比較検討して以下の結論を得た。 1)国内研究用照射場における核反応率計算のために,熱中性子束・中性子温度・カドミ比・速中性子束などの特性値を測定した結果,従来の原子炉側の従来の公称値では統一的に見ることができず,それらの公称値だけでの照射場間の比較には問題があることを明かにした。他の照射場の特性値も一般的に比較できる形に整理した。 2)国内研究用照射場の特性値をもとに,それらの照射場におけるU・Thの核分裂反応率をENDF/B-VIあるいはIRDF-90の核データファイルを用いて計算し,それらの照射場におけるフィッション・トラック年代測定の実験に照射場の特性がどのように影響するのかを明らかにした。 3)現在利用可能な国内の研究用原子炉の照射設備は,設備の仕様上からも,また中性子照射場としての特性のうえからも照射利用のための選択の範囲は狭く,実験の範囲が限られているなどの問題がある。 4)フィッション・トラック年代測定では試料照射のつど原子炉中性子の熱中性子束やスペクトルを年代測定値に有意な程度に決定することは,実際問題として著しく困難であるので,照射にあたっては,照射に関する問題のほとんどないような照射場のみを利用する必要がある。 5)今後はさらに海外の研究用原子炉をも含めて多数の厳選された照射場間だけでの年代標準試料の年代測定結果の比較検討を通して,国際的なフィッション・トラック年代測定値の標準化を確立する必要がある。
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