研究概要 |
本研究を通して,2年間に得られた成果は,以下の3項目に分けて総括することができる: 1.中部琉球構造区に位置する伊江島および沖縄島北端辺土岬一帯の更新世サンゴ礁段丘に関する空中写真判読と現地調査を行った。その際,採集したサンゴ化石のウラン系列年代測定を行い,現在の汀線付近に,完新世サンゴ石灰岩が存在することを確認した。 2.琉球弧と同じ構造区に位置する西太平洋域のサンゴ礁段丘が発達するパプアニューギニア,ヒュオン半島およびフィリピン,ボホール島における現地調査とウラン系列年代測定によって;(1)前者については,7万年以降現在までの低位段丘の年代が確定し,その結果と段丘構成層の岩相および生相解析の結果を併せて最終間氷期最盛期以降の氷河性海面変化の実態を明確にできつつある。(2)ボホール島における最終間氷期最盛期に形成された隆起サンゴ礁の存在とその分布高度から,同島が過去13万年間殆ど隆起していないことが推論できた。 3.本研究で目指した問態解決に最も重要な手法のウラン系列年代測定法の信頼性を検証するため,(1)波照間島およびヒュオン半島産の同一試料を,αスペクトル^<230>Th/^<234>U法・TIMS^<230>Th/^<234>U法・電子スピン共鳴(ESR)法によって年代値を求め,それらを比較検討した。その結果それぞれの方法の問題点が明らかになるとともに,各方法の測定精度の限界が明確になった。(2)特に,^<230>Th/^<234>U年代値の信頼性を知るには,2種類のコンコーディア(年代一致曲線:[^<230>Th/^<234>U]-[^<234U/^<238>U]・[^<230>Th/^<234>U]-[^<231>Pa/>235┫D1U]コンコーディア)の利用が最も有効であるとの結論に達した。
|