研究概要 |
水管を欠くタマキガイ科二枚貝(Glycymeis vestiti,G.Albolineata,G.reevei,Tucetona pectunculus)の姿勢を野外および水槽で観察した結果、(1)交面を底質表面(水平面)に直交させ、殻後部を底質表面近くに持ちあげる種群と、(2)交面を底質表面とほぼ平行にして横たわる種群があることが分かった。前者にはG.vestita,G.albolineata,G.reeveiが属し、後者にはT.pectunculusが属する。 タマキガイ科二枚貝は、外套膜外褶外側上皮に外套眼を持つ、外套眼は約250個の個眼が半球状に集合した複眼で、左右の外套膜上にほぼ対称に分布する。各個眼はレンズと光体を備え、色素細胞で区画される。外套眼(複眼)のサイズは種類及び個体の成長段階による違いはあまり無く、直径0.1〜0.2mm程度である。G.vestita,G.albolinaete,G.reevei,G.rotunda,G.subobsoleta,Tucetilla crebrelirata,Tucetona pectunculus,T.avdouine,T.spについて、外套眼の数、位置を調べた結果、外套眼の数は、Glycymeris属よりもTucetona属で多く、若い個体よりも、大型の個体で多いことが分かった。外套眼はGlyuymeris属、Tucetilla属では外套膜後縁部、Tucetona属では、前・後両縁部に分布する。 水管の発達したRuditapes philippinasum,Glycydonte maricaの姿勢は(1)であり、非常に安定している。今回の研究では、姿勢の確認、外套眼の記載に止まり、姿勢制御のメカニズム、姿勢の機能について議論するには至らなかったが、繊毛流、擬水管、外套眼の位置と姿勢に密接な関係があること、タマキガイ科ではGlycymeris属に(1)、(2)両方の姿勢が見られ、系統的に新しいTucetona属で(2)だけが見られることが分かった。Glycymeris属の(1)の種群は、形態学的Veletuceta亜属にまとめられており、Tucetona属よりも更に特化した種群の可能性がある。
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