研究概要 |
背弧海盆熱水系における物質移動に関する研究を行った。特にマリアナ海盆の熱水性鉱床と日本の第三起に生成した黒鉱鉱床地域を研究対象とした。マリアナ地域では硫化物-硫酸塩チムニーの研究を行った。例えば,チムニー内のシリカと重晶石の分布をしらべた。この分布の解釈を,沈殿カイネティックス-流動モデル,及び沈降-分散モデルにもとづいて行った。黒鉱鉱床地域では,変質岩の研泣を行った。特に,変質岩の主成分,微量成分分析を行い,熱水と岩石の反応による元素の移動について明らかにした。そして,黒鉱鉱床地域の変質岩の分析結果と海嶺の変質岩の分析結果の比較を行った。その結果,変質トレンドは類似点が多いが,相異点も見い出された。この相異は,源岩組成と重隙底の違いによると考えられる。微量成分分析として黒鉱地域の変質岩の分析を行っている。その結果,岩石種の違いに応じて希土類元素パターンの違いが明らかにされた。黒鉱鉱床地域については,この他に炭酸塩鉱物の分布,化学組成,同位体組成分析を行った。その結果,鉱床から離れるにつれ,炭酸塩岩の性質が異なることが明らかにされた。この相異は岩石-水反応の程度の違い,及び熱水流動パターンの違いで解釈される。以上の研究より,背弧海盆熱水系の進化を明らかにしつつある。以上の研究をもとにして,背弧海盆熱水系の海洋・大気相成に与える影響を見積った。特に二酸化炭素,硫黄のグローバル地球化学サイクルについての考察を行った。この他にヒ素,水銀,アンチモンなどの元素のグローバルな地球化学サイクルについて考えている。この研究により,これらの揮発性元素の沈み込みフラックスと,島弧・背弧系からの脱ガスフラックスは大まかには等しいことがわかった。それに反し,二酸化炭素の沈み込みフラックスは島弧・背弧系からの脱ガスフラックスよりもかなり大きく,この沈み込みフラックスと海嶺フラックスはほゞ等しい。
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