研究概要 |
本研究は,良く定義されたGaAs(001)面を活性化してその表面構造と電子状態を明らかにし,NEA状態が生じる機構を解明することを目的としている.まず,再現性良く,かつ容易にGaAsの清浄表面を得るために,硫化処理したGaAs表面の光電面への応用を検討した.このために,硫化処理したGaAs試料の昇温脱離スペクトルの測定を行い,硫化物の脱離過程を明らかにした.また,NEA光電面の実用面で問題となる,真空中の残留ガスの吸着による感度低下の機構を調べ,セシウム/酸素活性層の状態が変化するだけではなく,下地のGaAsの酸化によって感度が低下することを見いだした.さらに,試料に用いるGaAs表面は分子線エピタキシ(MBE)法によって製作して原子的尺度で良く定義された面を再現性良く準備し,さらにその活性化過程とセシウム/酸素層の表面構造及び電子状態の解析が可能になるように,MBEで結晶成長した試料を用いた光電面の製作を検討した.製作した光電面を実際に応用するにはNEA活性面と反対側から光を入射する透過モードでの動作が望まれるので,GaAs薄膜を透明基板上に形成する必要がある.このため,我々は透明基板であるGaP上にGaAsの形成を試み,その形成初期過程を明らかにした.また,製作した光電面の電子状態を調べるために,MBE装置と一体となって超高真空中で動作するSTM装置を開発し,グラファイト(HOPG)の原子像を得た.また,GaP(001)基板上に形成されたGaAs島を観察し,その形状が異方性を持つことを明らかにした.
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