研究概要 |
平成6年度においては,赤外可視変換材料における基本的過程,特にエネルギー逆伝達過程の詳細な検討と,かかる材料をコヒーレント光源…アップコンバージョンレーザ…に応用した場合の問題点について詳細に研究を行った。 もっとも有望と考えられているYb^<3+>とEr^<3+>含有材料の問題点がEr^<3+>からYb^<3+>イオンへのエネルギー逆伝達にある点から,各種母体材料(YF_3,BaY_2F_8,LiYF_4など結晶材料のほかフッ化物ガラス)におけるエネルギー伝達係数の実験的決定を行った。種々のEr^<3+>とYb^<3+>濃度の材料を多数製作し,パルスYAGSHG光励起後の緑色発光減衰特性を精密に測定した。結果は,Yb^<3+>濃度の増加につれて減衰特性は指数関数から外れ,母体に特有の関係を示すことが判明した。今回,エネルギー・アクセプタであるYb^<3+>が,母体内のY格子点に確率的に分布するものとして数値的な解析を行った。各結晶格子の動径分布関数を求め解析を行うことによって,単一の相互作用パラメタCによって説明可能であることを示した。結果は応物学会などにおいて報告を行ったほか,JAPで刊行を予定している。今後は,赤外可視変換材料の特性を支配しているYb^<3+>イオン間のエネルギー漂移(MIGRATION)の問題の定量的把握に向ける予定である。アップコンバージョンレーザ発振に到る問題点を明らかにするため,半導体レーザとTi:サファイヤレーザ共励起下における緑色発光の挙動について研究を進めた。Yb^<3+>,Er^<3+>赤外発光による損失が大きいので,光閉じ込め構造の採用によって閾値の低減が可能であることが示すなどの進展があった。最終年度を迎え,総合的な展望を含めたまとめを進めている。
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