研究概要 |
航空機の空力設計において計算流体力学は既に設計解析ツールとしての重要な位置を占めているが,計算機能力が高まるに従い,機体三次元形態のまわりの流れを実飛行状態で精度良くシミュレートすることの要求が高まっている.その場合に問題となるのが,複雑形状に対する空間離散化,すなわち格子形成である.従来は構造格子を用いて行われて来たが,その格子形成には長い経験と多大な労力が要求された.この問題に対するブレークスルーとして非構造格子の研究が80年代後半から盛んになってきた.しかし,高レイノルズ数流れの計算には非構造性ゆえに多大な計算時間を必要とし,実用化は未だになされていない. 本研究では,航空機等の複雑形状まわりの流れの数値計算法として,プリズム状の格子を用いた新しいコンセプトを提案し,プリズム格子の自動形成法および有限体積法に基づいた流れ計算法を開発した.この手法を用いてボ-イング747型機モデルまわりの遷音速高レイノルズ数流れの数値計算を行い,翼面上圧力分布の計算結果を風洞実験値と比較して本方法の有効性を実証している. 本研究で提案したプリズム格子法は,従来の構造格子法と非構造格子法との良い折衷案であり,非構造格子によるナビエ・ストークス方程式の数値解析でも,物体近くの粘性領域ではプリズム格子を用いるべきとの考えが世界的に一般的になりつつある.今後,より複雑な形状問題に対しての計算法として,プリズムと四面体による準非構造格子法が有望であり,そのためには物体面の定義,表面格子形成,空間プリズム・四面体格子形成,陰的時間積分による数値計算法,解適合細分割法等の研究・開発・コード整備が必要である.
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