研究概要 |
炭素繊維強化複合材料の成形する際にタルク剤をポリエーテルイミドに混入させてCFRPを成形した。その後,メッキ浴に入れ,まずCuメッキを施し,その上にCrメッキを行した。このCu-Cr膜にダイナミックミキシング法によりNイオンを1kVの加速電圧で注入した。このようにして作製した試料を加熱温度60,90,120及び150℃で30分間保持し,空冷した。メッキ膜の硬さはNイオン注入の有無によらず,最表面近傍で約4000であり,内部に入るにつれて次第に減少した。しかし0.5μm内部での硬さはCFRPそのものより高い。メッキ膜の密着強度は加熱温度が90℃のときに最大となり,それより温度が高くても低くても密着強度が低下する。密着強度は荷重速度及びテーブル速度に依存して変化した。 メッキ膜の残留応力をひずみゲージによって測定すると,表面では引張残留応力となっていた。この残留応力は加熱温度が120℃のとき最大となった。Nイオン注入膜では,Nイオン注入の際,150℃まで加熱されているために室温でも高い引張残留応力を示した。この表面での引張残留応力の存在は界面近傍で圧縮残留応力の存在を示唆する。この残留応力が密着強度の向上に寄与している。引張強さ及び曲げ強さはメッキ膜の被覆により7〜11%向上した。しかし,摩擦係数はCFRP単体が約0.1であるのに対しメッキ膜では0.8程度であった。ボール摩耗量も約100倍増加した。
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