短繊維強化複合材を対象としたマイクロメカニックス研究によって、次の二つのテーマの解明を試みた。 1.短繊維強化複合材の微視的破壊と非線形挙動 FRP(fiber reinforced plastics)をはじめとし、FRM(fiber reinforced metal)、FRC(fiber reinforced ceramics)等の各種の短繊維強化複合材を対象として、複合材内の微視的破壊の発生、成長、合体の損傷機構を解明し、それをモデル化してコンピュータシミュレーションを行い、巨視的応力-ひずみ関係に代表される荷重負担機能を明らかにした。さらに、短繊維強化複合材の破壊エネルギーを繊維、母材の材料特性や繊維の長さ、配向分布および界面の基本特性から決定する方法を確立した。 2.短繊維強化SMC複合材中の応力腐食によるき裂進展 ガラス短繊維を強化材とするSMC複合材からCT試験片を作製し、塩酸環境下でき裂進展試験を実施した。実験結果からき裂進展速度は、近似的にき裂先端での応力拡大係数のべき乗形で表わされた。このべき乗則についてマイクロメカニックスの観点から考察を行い、べき乗則を理論的に誘導した。さらに、ガラス繊維内のき裂に対する応力拡大係数を三次元BEMにより求め、その結果をガラスと酸の反応方程式に組入れて、時間経過に伴うガラス繊維内の応力腐食によるき裂進展挙動およびき裂先端形状についてのコンピュータシミュレーションを行った。その結果、ガラス繊維内のき裂進展挙動は、ガラス繊維の破断面のSEM観察より推測された通りであることの裏付けを取ることができた。
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