研究概要 |
本研究のこれまでの一連の結果として得られている応力増分方向依存性をとり入れた新塑性構成式を導入して,二次元変形問題解析用有限要素法解析プログラムを作成した.構成式に大きく依存する不安定問題の一つとして,平面ひずみ条件下での板の引張りにおける局所せん断帯発生の例があるが,この問題について,方向依存性の程度を左右するパラメータを種々選択し数値解析を実行した結果,応力増分依存性の程度が大きい程,せん断帯局所化現象が明確に出現することが確認できた.しかしながら,塑性域の応力ひずみ関係を調べた過去の実験結果のデータにはそれ程強い応力増分依存性は示されておらず,本研究では局所せん断帯を発生せしめるためにはそうした過去の実験データよりかなり強い依存性を導入しなければならなかった.ところが,既存の応力増分依存則の一つとして広く用いられてきたChristoffersen-Hutchinsonによる角点構成式を用いた同問題に対する過去の数値解析結果は著しいせん断帯の形成を示している.従って,今回の研究成果を踏まえて判断するならば,Christoffersen-Hutchinson則はかなり強い依存性をもたらすものと推定され,解析的検討の結果,応力増分の振れ角が大きい場合に対し注意を要する事が分かった. 新塑性構成式の材料パラメータを決定する材料試験として薄板の面内負荷により生ずる局所くびれ帯の発生を調べる成形限界線図が利用できることを示した.
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