研究概要 |
本研究は,構造変形と電磁場の連成問題を取り扱うための理論を確立するとともに,それに基づく有限要素定式化を行うことを目的として行った.平成4年度に得られた成果は以下の通りである. 1.通常,電磁場の支配方程式であるMaxwell方程式は空間固定の座標系で表現されており,電磁場の有限要素定式化もこれに基づいている.しかし,構造の変形との連成を考慮する場合はこのようなEuler表示では定式化が困難である.このため,物質固定の座標系に基づくMaxwell方程式の弱形式を求めた.従来の電場,磁束密度,磁場などが空間形式(spatial form)であるのに対し,本定式化ではこれらの物質形式(material form)を定義し,Maxwell方程式の弱形式はこれらの物質形式で表現される.これに関連して,空間形式と物質形式との対応には構造の大変形理論との類似性,differential geometoryとの関連等を指摘した. 2.上述のMaxwell方程式および仮想仕事の原理式(釣合方程式の弱形式)が連成問題の有限要素定式化の基礎式となるが,本研究では,大変形解析におけるUpdated Lagrangian Formulationの拡張にあたる増分形式の定式化を提案した.特に,強磁性体などのように履歴効果が存在する場合にこの定式化が有効である. 3.従来の弾塑性有限要素定式化において,静水圧による変形や圧延問題で荷重が変形に依存する場合に,荷重補正マトリックスが必要となることが知られている.本研究で対象としている電磁場と構造の連成問題では電磁力が構造の変形に依存するため,表面力および体積力が変形に依存する場合の一般化した表式を求めた.
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