研究概要 |
繊維強化複合材料積層板の確率材料設計法を体系化するため 1)複合材料積層板の確率強度評価法の検討と応用, 2)確率材料設計法に寄与する構造信頼性理論の改良 の2点に焦点を絞って研究を進めた. その結果,まず一方向積層板の信頼性解析のための定式化を試み,材料強度パラメータ,積層パラメータ,荷重パラメータ,寸法パラメータの不確定性を考慮して巨視的破損則に立脚した信頼性評価を行なえる解析モデルを確立した.さらに,繊維配向角と面内多軸荷重の任意の組合せに対して,確率的強度特性評価を行なった.これらの結果を,面内ひずみ空間内で表現できれば,積層板の確率材料設計における実用性の高い設計支援グラフになり得ることを確認した.さらに,積層板内の任意の層の破損が他の層の破損に及ぼす影響をふまえた破損シミュレータを開発した.これより,従来求められなかった,多層積層板の逐次破損プロセスを追跡しながら,各層の破損する条件付破損確率を評価した.また,このような条件付破損確率が求まれば,各破損プロセスの全体の生起確率は近似的にせよ,組み合わせ数理計画法の応用として精度よく求まることや,あるいは遺伝的アルゴリズムの応用により大規模な層数の材料設計に対しても効率的な全体の最終破損確率の予測が可能になることを示した. さて,確率材料設計法では何といっても破損確率の評価が極めて大切である.科学研究費補助金による援助期間において,この点からの研究も進めた.その成果の一つは,多変量確率変数の標準化変換法の体系化の道筋を作り,いくつかの変換法が構造信頼性解析において最終結果である破損確率や安全性指標の推定結果にどのような影響を及ぼすかを明確にした.さらに,安全性指標の統計的不確定性を検討し,サンプルサイズを考慮した信頼区間の設定法を開発した.
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