研究概要 |
加工物を研削幅の中央で二つに分割し,その分割面を鏡面に仕上げ,真空蒸着装置により固有の融点をもつ物質のPVD薄膜(膜厚0.1〜0.2μm)を蒸着する.その後,この面を一体に合わせて研削加工を行ない,加工後この分割面を観察すると,研削熱によりPVD薄膜が融解した部分と融解しなかった部分との境界線が明瞭に識別できる.この境界線上の加工物の温度は薄膜物質の融点に等しく,境界線を一本の等温線とみなすことができる.したがって融点の異なる各種の物質を分割面に蒸着し,同様の実験を繰り返し行えば,加工物内部の微小領域の温度分布を従来の方法により格段に精度よく求めることができる.これが本研究で提案する温度測定法である. 本研究は,上述の手法で加工物表面の温度分布の測定を行ない,加工条件,研削砥石の材質(WA砥石,GC砥石,CBN砥石),加工物の材質(ステンレス,炭素鋼,銅合金)が温度分布やエネルギ分配率にどのように影響を与えるのかを明らかにした.結果の要約は以下のようである. 1.加工表面からある一定の深さまでの温度勾配は,研削砥石や加工物の材質に関わらず本研究で行なったすべての加工条件において,移動熱源理論より求められる解析結果とよく一致することが確かめられた. 2.エネルギ分配率(全消費エネルギのうち加工物に流入する割合)は加工条件,研削砥石や加工物の材質によって大幅に変化する.現在のところ,このエネルギ分配率がいかなる因子によって最も影響を受けるのかは明らかにすることができない. 3.本研究で提案した温度測定法は研削加工に有効に適用できるものである. なお,本研究で提案した温度測定法は特許出願済みである. (特許平5-168644 内部温度測定用部材およびそれを用いた内部温度測定法)
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