研究概要 |
バルクとの特性の連続性ならびに単一薄膜とは異なる特性の創生を考慮し,薄膜の成分組成を母地界面から表面へと変化させる傾斜機能コーティングを高周波マグネトロンスパッタリングによって行った。基板は切削用超硬チップとし,純度99%以上の焼結体ターゲットよりのWC,TiNを傾斜させてスパッタ蒸着していった。スパッタガスはArとし,流入前の真空を10^<-3>Paとしておき,流入後2Paになるよう調節した。スパッタガンの磁界はTiNを0.08テスラ,WCを0.02テスラとした。形成されたコーティング膜に関しては多くの性能評価試験を行った。薄膜厚さ方向成分分析をオージェ電子分光分析で行ったが,表面真下の0.2μmはほぼTiのみ,0.2〜0.6μmでは次第にTiが減りWが増える傾料機能層,0.6μm以上ではWが主,2μmで焼結助剤のCo,すなわち,基板のチップが始まったことが認められ,当初予定した通りの膜成分となっていた。X線回折においては,TiN単属の鮮明なピークに比べ,傾斜機能ではピークがブロードになっており,結晶化が進んでいなく,成分の混在により傾斜いずみを受けている。膜の強度性能試験は,焼入,研磨したφ26×4mmのディスク側面を回転させながら試料に押しつけるディスクシュー型摩耗試験機で行った。コートしない超硬チップの場合には激しい摩擦音とともにむしれ摩耗となったが,傾斜機能コートおよびTiNコートの場合には摩擦音はなかった。また,TiNコートの場合には早い段階で膜剥離が生じたが,傾斜機能の場合には剥離規模は小さく,遅れた。以上の研究成果は現在日本機械学会論文集に投稿中である。 TiN
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