研究概要 |
繊維強化複合材料の強度は成形条件により影響を受け,しかもばらつきの多い成形品が得られることが多い.そこで成形品の成形性を評価するためにAEを利用する方法を開発した.繊維強化複合材料の破壊の形態としては,マトリックスの破壊,繊維の破断,繊維の引き抜き,繊維とマトリックスとの界面の剥離,繊維束中の繊維のすべりが考えられるが,実際の破壊ではこれらが組み合わさって起こると考えられる.そこでこれらの破壊の形態をそれぞれ分離することが必要である.本研究で使用したスタンパブルシートは,ポリプロピレン樹脂をチョップドストランドガラス繊維で強化したものである.この成形材料に対し,繊維長繊維含有率,繊維解繊度を変化させた,各種の組成の異なるスタンパブルシートを作った.それらのスタンパブルシートとを圧縮成形して得られた成形品から曲げ試験片を切り出し,曲げ破壊したときに放出されるAE波をFFTにより周波数分析を行った.その結果,スタンパブルシートの曲げ破壊中に発生するAE波の周波数と微視的な破壊機構の対応が明らかになった.すなわち (1)マトリックスの破壊が65KHz付近,(2)ガラス繊維の破断による破壊が85KHz付近,(3)ガラス繊維とマトリックスとの間の摩擦を伴ったすべりによる破壊が105KHz付近,(4)ガラス繊維どうしのずれによる破壊が135KHz付近,(5)ガラス繊維とマトリックスの界面の剥離による破壊が160KHz付近であることが明らかになった.さらにこれらの結果を確かめるために,走査型電子顕微鏡の試料室内に,微小引張り試験機を組み込み,引張り時の破壊状態を観察しながら,AE波の計測を行った.そしてAE波の周波数分析を行った結果,105KHzと135KHzの周波数に対応する破壊形態を確かめることができた.
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