研究概要 |
超伝導マグネットでは摩擦熱がクエンチの原因となり,また接触面でのせん断力と摩擦抵抗の関係が相対滑りを引き起こすことが指摘されているので,本研究ではマグネット構造材料のトライボロジー特性を極低温真空中で求めた. (1)摩擦特性 JN1-JN1,JN2-JN2,SUS316L-SUS316L,JN1-Cu,JN2-Cu,Cu-Cu,JN2-CuNiの7種の組合せに対し,5K〜150Kの極低温真空中で摩擦特性を求めた.摩擦係数(μ)の温度特性には3つのタイプがあり,(1)Cu-Cu,JN2-CuNi,SUS316L-SUS316Lの場合には温度に依存せず,μ=4.0程度の高い値を取る,(2)JN1-JN1,JN2-JN2の場合のように徐々に増加する,(3)JN1-Cu,JN2-Cuの場合のように40〜90Kで高い値を取る場合である. (2)真空中での摩擦による温度上昇 駆動試験片に熱電対を挿入し,摩擦による温度上昇の測定を試みた.しかし駆動側試験片の冷却が不十分であり,測定はできなかった.駆動側試験片の冷却は固定試験片からの熱伝導のみであり,今後新たな冷却方法を考える必要がある. (3)Nb_3Sn素線被膜のトライボロジー特性からの評価 CIC導体のNb_3Sn素線にはCr被膜が通常施される.本実験ではCrの被膜の摩擦特性,接触電気抵抗,被膜損傷についてフレッティング状態下,液体ヘリウム中で調べるとともに,他の7種類の被膜に対しても検討した.その結果,熱処理したW系アモルファス被膜が摩擦係数が低く,接触電気抵抗は高く,かつ破断までの寿命も長く,最適であることを得た.
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