研究概要 |
機械の動力伝達に用いられる回転軸は,単にたわみ振動をするばかりでなくねじり振動も発生してこれが各部位へ伝播する.この振動は歯車などの回転方向振動と連成して系全体の振動に寄与する.軸のねじり振動(振動モード)を軸方向の任意の点で計測するには非接触によらなければならず,そこでこの様な軸のねじり振動の分布を非接触かつ簡便で,的確に計測できる手法の実現を目的とする. このために,軸の表面に目盛り縞を貼り付け,これを光学的に読み取り軸のねじり振動モードを推定することを歯車装置の歯車軸に適用しその振動を計測することを試みた. 1.まず軸の回転方向と軸直角方向の振動を同時に計測できるように測定系を構築した.縞の作成方法としては写真による縮小手法を用いて,乾式複写機で作成できることを確認しておよそ6本/mmの縞を製作した. 2.つぎに,歯車軸を運転しながら軸の回転方向の振動を本手法によって計測して,歯車に取り付けた加速度ピックアップから得られる振号と比較検討した結果,主要な振動成分についてはよく一致することが計測された波形および周波数分析結果から分かった. 3.同時に軸直角方向振動についても計測を試み,レーザドップラー振動計で測った軸表面の振動とは主要な周波数でよく一致することが分かった. 4.軸の表面に取り付けた目盛縞のつなぎ目は,波形にスパイク状のノイズを発生するので周波数分析に際してはFFTのトリガー遅延機能を用いてこの部分を分析の窓から外して解析を行うことでよい結果が得られることを示した. 5.原理的には軸のねじり振動と軸直角方向の振動を同時に計測できることを示したが,本来の振動ではない周波数成分が僅かに認められ,この原因を明確にできなかった. 6.研究を通じて,運動している物体表面の振動挙動を計測するのに,どの手法による計測が信頼できるかについて課題が残った.
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