研究概要 |
実用リフレクターと同じ型式の反射体を用いて,第2焦点近傍での衝撃波フォーカッシング過程とその結果誘起されるキャビテーション現象を詳細に観測した。試作のPVDF圧力計による圧力測定並びに超高速度カメラによる第2焦点近傍の流体場の光学観察の結果,衝撃波フォーカッシングによる急峻な圧力上昇の背後に引き続く負圧成分が,液中におびただしい数のキャビテーション気泡を生成させる主要な原因であると考えられた。この負圧の生成原因としてリフレクター出口での反射衝撃波の回析による膨張波が集束する結果であると推測された。そこで,リフレクター出口端形状を変化させること,例えば角に丸みをつけるなどして第2焦点での膨張波の集束の程度を弱めてやることが負圧形成の抑制,ひいてはキャビテーションの抑制につながることが示唆された。一方,第2焦点近傍に現われる複雑な現象を理解するため,より簡単な状況下で,衝激波/気泡の相互作用並びに気泡/気泡の相互作用などの要素研究が行われた。中でも生体損傷との関連で重要である各種変形壁近傍での気泡の挙動が詳細に究明された。生体模擬物質として用いられるゼラチン壁面上に付着したガス気泡と衝撃波との相互干渉実験により,気泡を貫通してゼラチン内部を進行する液体マイクロジェットの貫入深さが衝撃波の強さやゼラチンの物性に依存することが明らかにされた。さらに2個の気泡の相互作用に関する実験から,気泡は個々の運動の位相の違いによって様々な運動形態を取り得ることが明らかとなった。強い相互作用のある2個の気泡の運動においては,超ジェットの発生や気泡の分裂・渦輪の発生など興味深い現象が現われた。こうして形成される超ジェットは,単一気泡に生成されるマイクロジェットより壁画への衝突速度が大きく,軟質金属のインジウム試片上にピット痕を残した。以上の結果は国内・外のシンポジウムおよび専門雑誌に発表されている。
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