研究概要 |
翼列に生じる二次流れを制御することによるタービン性能向上の研究を行った.二次流れ制御法として,ノズル翼間通路内のハブおよびチップ側の側壁面上に境界層フェンスを設ける方法を試みた.フェンスの高さが入り口境界層厚さの範囲内で種々異なる場合について,翼列出口面で全圧損失の分布と二次速度の分布を計測した.二次速度の測定に熱線流速計システム一式(1471千円)を使用した.えられた全圧損失と二次速度の分布から,翼列下流の混合損失を含む総損失と渦度分布およびピッチ平均流出角分布を求めて,これらとフェンス高さの関係を調べた.さらに,翼間通路表面の限界流線を油膜法で可視化し,油膜模様と渦度分布を総合することによりフェンス設置に伴う前縁馬蹄渦の挙動を調べた.本研究によって,以下のことが明らかになった. 境界層フェンスは,それがチップ側の側壁面に設けられるときに,損失を低減して流出角分布を一様にするのに有効である.特に,入り口境界層厚さの約25%の高さのフェンスは最も効果的である.この最適フェンスを設ける場合には,総損失はフェンス無しの場合に比べて14%低減し,チップ側での流出角減少ピークは消滅する.一方,境界層フェンスをハブ側の側壁面に取り付けるときは総損失がわずかに増すが,流出角分布はより一様になる.チップ側の最適フェンスによって前縁馬蹄渦の腹面側の脚はフェンス近傍に捕らえられて,翼の背面には達せず,したがって翼背面での三次元剥離に伴う損失が減少した.この局所的な損失減少効果が,フェンス設置に伴う当然の付加損失を補償する結果として,総損失が低減するものと判明した.以上の成果を日本機械学会論文集に発表する予定である.
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