研究概要 |
本研究は近年普及してきた氷蓄熱システムの熱効率向上を図る一手法として,熱伝導体を用いた蓄熱の促進及び抑制方法を提案し,定格出力の小さな氷凍機でより多くの氷蓄熱を行なうための基礎資料を得る目的で行なった.凍結速度の促進・抑制には伝熱面との間に隙間を有する平板熱伝導体を用い,実験と解析によりその効果を調べ,以下の知見を得た. 1.解析手法の確立および解析結果と実験結果との比較 凍結を促進させる目的においては,平板熱伝導体のピッチは10mm程度かそれ以上で十分であり,従って従来報告されているような,熱伝導体と凍結層の等価熱伝導率を用いる簡便な解析手法は適用できない.本解析においては,まず平板熱伝導体とそれに直角に位置している伝熱面との伝熱量を数値計算により求め,それらの位置関係と伝熱量との関係式を導出した.その結果を用いて準定常法により解析した結果,非定常凍結過程および定常状態の凍結量は実験結果と良く一致する結果が得られ,ピッチが大きい場合の解析手法を提案した. 2.定常状態における凍結量促進と抑制の限界条件 平板熱伝導体と伝熱面との隙間を変化させることにより,平板熱伝導体がない場合に比べて凍結量が促進されるか抑制されるかの限界条件を明らかにした.また限界条件は,ピッチが小さくなるかまたは熱伝導体の厚みが増加すると抑制され易くなること,さらに材質や熱伝導体長さの影響は小さいことを明らかにし,平板熱伝導体を用いる場合の最適寸法および最適位置関係を明らかにした. 3.蓄熱熱効率の検討 平板熱伝導体を適当な位置に設置すると,凍結速度が一定となることを見い出した.また,この一定凍結速度においては,蓄熱効率も一定に保たれ,熱伝導体のない場合に比べて,一定で小さな冷凍負荷となることを明らかにした.以上により得られた知見は,冷凍機の定格出力の小さなものでより高い蓄熱効率が得られることを意味しており,蓄熱システムの高効率化につながる基礎資料を得た.
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