| 研究概要 |
本研究はヘリカル型核融合炉装置設計に必要な高熱負荷時の熱流体解析コードの開発を目的として遂行しているもので,炉壁の冷却測壁近傍における流れの非等方性を再現できる非等方乱流モデルと,任意の熱負荷条件における温度場を解析できる温度場乱流モデルの構築を研究の重点項目としている.本研究の成果は以下のように要約される.
1.非等方流れで,任意の熱負荷条件の熱流動解析が可能な速度と温度場のそれぞれに対する2方程式乱流モデルを考案した.そして,乱流モデルの不具合が露見し易い流れ系についてこのモデルの検証を行い,温度場乱流諸量の挙動を忠実に予測できることを確認した.
2.核融合炉の過酷な運転条件に充分対処できる乱流モデルに発展させるには,非等方化過程を支配する圧力・歪相関および圧力・温度勾配相関などの乱流素過程に関する情報が必須である.そのため,強いせん断が付与された非等方性流れとその状況下における熱拡散の挙動をスペクトル法を用いた直接数値シミュレーション(DNS)によって調べた.
3.採取したデータを分析した結果,速度場のモデルについては改善すべきことが判明した.そこで,DNSデータベースを基に,低レイノルズ数形k-ε乱流モデルの再構築を行った.完成したモデルは,DNSで観察される乱流挙動を忠実に再現し,これまでの乱流モデルの不都合を克服できるものであることを確認した.
4.さらに,強いせん断による急激な非等方化過程における大小乱流渦間のエネルギ伝達を考慮し得るように,新しい乱流モデルの構築も試みた.これは,多重スケール乱流モデルと呼ばれるもので,通常のk-ε乱流モデルでは予測不可能な流れ場までも再現できるものである.
これらのモデルの構築によって,所期の研究目的である炉システム設計に必要な高熱負荷時の熱流体解析コード開発の目途が得られた.
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