研究概要 |
本研究では,エネルギー変換することなく太陽熱エネルギーを有効に利用する可能性に関して考え,蒸留システムの開発が,高効率に太陽熱エネルギーを利用でき,しかも,社会的に価値があるとの結論に至った. 蒸留システムの基本的概念については,2年間の準備期間に確立していた.平成4年度は,実際に蒸留システムを構築してその基本的性能を明らかにした.実験結果は,当初の予想以上の性能を示しており,非常に小さい温度差で蒸留が行われていることが明らかになった.これは,高温部と低温部の組み合わせをカスケード化して,一度蒸留に使われた熱をさらに再利用してもう一度蒸留に用いる多重効用型システムに発展させられる可能性を示唆していた.平成5年度は,太陽熱集熱器の設計・製作および蒸留器本体と集熱器の統合化,そして,集熱器部を備えた太陽熱蒸留システムの総合性能を明らかにすることを当初の目的と考えていたが,これに加えて,平成4年度の結果を踏まえ,より発展的に2段式蒸留器を製作した. 以下にその結果をまとめると,集熱器に関しては,代替フロンHCFC-123を作動流体とするサーモサイホンを集熱器として,真南方向に水平面から30°傾きを与え,集熱面積を1.61m^2としたとき,おおむね64%の集熱効率を得ることができた. 蒸留器の総合効率に関しては,2段式蒸留器を用いて平成5年10月から平成6年1月までの期間,実際に屋外において実機試験を実施し,平成5年11月16日(終日快晴)に日射量14.9MJ/(m^2day)の条件で,蒸留収量7.35kg/(m^2day)を得ることができた.この日の収量から熱効率を求めると120%であり,これまでに報告されている太陽熱蒸留器の性能と比較して,最も高効率な値を記録した.集熱器の効率がまだ十分でないことと,計算機シミュレーションから6段式まで段数を増やせることが示されており,今後さらに高効率化することができることが予想されている.
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