研究概要 |
近年,非円形歯車の重要性が認識され,需要が急激に伸びている。しかし,従来の設計方法や加工方法では,需要に対する生産が追いつかないため,量産可能な加工機の開発が強く望まれるようになっている。たとえば,非円形歯車の設計は,通常の円形歯車と異なり,実際の使用条件に依存した複雑な計算を伴うため,コンピュータを用いた総合的な開発システムが必要となってくる。本研究では,非円形歯車の生産性の向上を高めるために,非円形歯車加工用NC工作機械の性能向上を図るとともに,CAD/CAM用のソフトウェアを開発し,非円形歯車の設計から加工までの能率向上を目的としている。 本研究における研究実績は次のとおりである。まず,既存のギヤシェーパとホブ盤の駆動系を改造し,非円形歯車を高精度に加工することが可能なNC歯切り盤とした。次に,非円形歯車の一つの応用例として,ウォーム減速器の回転誤差補正機構に非円形歯車を用いることを提案し開発したCADシステムによって,そのような非円形歯車が容易に切削可能であることを明らかにした。特にこの中で提案されたフーリエ変換を用いた誤差補正曲線は,従動側,駆動側のどちらのピッチ曲線も閉曲線となることが保証される曲線であり,連続回転が可能な不等速伝達機構の設計に非常に有効となる。本CADシステムは,このフーリエ変換による設計手法を含んでおり,従来から行われている経験的な設計手法と比較して極めて効率的に非円形歯車の設計を行うことを可能とした。また,非円形歯車の新たな応用例として,移動車の操舵機構に非円形歯車を用いることを提案し,操舵機構用非円形歯車が単純なだ円系歯車となることを明らかにした。提案された機構は,旋回半径を極めて小さくできる利点を有し,また,だ円系歯車は量産可能な非円形歯車の1つであるため,将来,各種の移動車への搭載が期待される。
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