研究概要 |
構造物の振動試験としては従来から接触形加振器を用いた正弦波掃引加振,ランダム加振による方法とインパルス打撃加振による方法が良く知られている.これらはいずれも接触形加振である.後者のインパルス打撃加振は一般に構造物に与えるエネルギが小さいため小形の構造物にしか適用できず,また,打撃の再現性等に問題を残している.一方,加振器による加振法は被試験体である構造物への設置法に問題があり熟練と経験が必要と言われている.また,これら従来の試験法では稼動中,運転中の構造物や回転中の軸等に対する振動試験を行うことは一般に不可能である. 本研究はこうした背景を踏まえて,設置が容易でかつ再現性があり,特に運転中の構造物,回転軸等に対しても振動試験を行うことが可能な磁気浮上方式による非接触形三次元加振器の構造設計法,制御系設計法の研究および関連の技術開発を行う.特に,磁気浮上形非接触加振器の総合技術開発に当たっては以下の基礎研究が必要である.(1)省エネルギを目指した永久磁石と電磁石併用による加振器アクチュエータの構造と制御方式の研究,(2)被試験体とアクチュエータとのエアギャップ間の高剛性実現のための制御方式の研究,(3)強い安定性を有する正弦波加振法,ランダム加振法の研究,(4)同時3次元加振器アクチュエータの構造と制御方式の研究等がある. 本研究は研究期間が2年間に限定されているために重点を絞って研究を行い,残された課題は引き続き継続するという方法をとった.したがって,この2年間の重点研究は上述の(2)で被試験体のアクチュエータとのエアギャップ間の高剛性実現のための制御方式の研究であった.これに関しては以下に述べるような多くの成果をあげることができた.これらの研究から磁気浮上形非接触加振器実現の見通しを得,かつ,部分的ではあるが一次元および二次元加振実験を行うことができた.当初の目標である非接触3次元加振器の実証は十分になされなかったが,見通しは得ることができた.また多くの問題点も明らかになった.一番の本研究の問題点は磁気浮上系の剛性の問題,およびエアギャップ部の機械インピーダンスの問題と考えられる.もちろん,これらは制御系の補償法によってアンプの飽和限度内において如何様にでも変更可能なのであるが,高剛性化を実施すると安定性やその他の制御性能が低下する傾向が見られる.この点を今後様々な角度から検討・考察してゆく予定である.
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