研究概要 |
接触回転系におけるロール外周部には,接触部を介した強い連成に起因してロール周上に変形が徐々に蓄積し,その成長過程を経て特有の周期的なパターンが形成されるという,いわゆる,ロールの多角形化現象が発生する.対象系として,抄紙機のスムーザーロールのゴムロールの多角形化,繊維機械のワインダー系の弾性糸系玉の多角形化および自動車タイヤの偏摩耗現象を理論的,実験的に取扱った.結果は以下のようにまとめられる. 1.ゴムおよび弾性系の粘弾性特性を3要素モデルでモデル化し、ロール間の接触部を高速で通過した後,生じた変形が回復する特性を表す減衰係数が時間依存性を有することを実験で明らかにし,そのデータから解析に使用するパラメータ値を選定した.この粘弾性体の変形回復特性がパターン形成に大きな影響を及ぼすことを明らかにした. 2.抄紙機のスムーザーロールのゴムロールと繊維機械のワインダー系の弾性糸系玉の多角形化現象をメカニズムに力点を置いて粘弾性変形を伴う時間遅れ系としてモデル化し,ラプラス変換を用いて不安定領域を計算した.その結果,系全体の固有振動数=回転数×角形数の近似関係が成立し,各角形数ごとの不安定領域が散在する,不安定性は接触部で逆位相となる振動モードで発生しやすい,ロール間/ドライブロールとボビンホルダー間の強い達成によってパターン形成は生じる,パターン形成の対策としては自励振動に対するものと同様に外部減衰効果が有効であることなどが明らかとなった.また,実機,実験機を用いた実験結果と解析結果の非常によい一致を確認した. 3.自動車用タイヤの偏摩耗現象も粘弾性変形と摩耗という相違はあるが,上記の多角形化現象と同種の現象であることを確認でき,機械系で生じるパターン形成の問題が系統的に取り扱われる可能性を示した.
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