本研究では、PWM整流回路の大容量化に適した方式として、主回路を2台の三相ブリッジ整流回路の並列接続構成とし、整流回路を構成する個々の素子のスイッチング周波数を低い値としながら、交流側LCフィルタから見込んだ等価的なスイッチング周波数を状態帰還制御が有効に適用できる高い値とする方式について検討したものである。その成果を要約すれば次のようになる。 1. 交流側LCフィルタの状態帰還制御、出力電流制御および各ブリッジ回路間の電流平衡制御を両立できる新しい制御回路方式を開発するとともに、シミュレーション解析を行い、制御回路のパラメータの決定に関して有用な知見を得た。 2. 各ブリッジ回路のPWMパターンの発生に用いるキャリア信号波形として、三角波を用いる方法とのこぎり波を用いる方法を開発、両者を比較検討した。その結果後者の方法が素子の一周期当たりのスイッチング回数が少なくて済むことが判明した。 3. 前項1、2を反映させた二重接触PWM整流回路を試作し、これにRL負荷を接続して、出力電流指令値を種々変化させ、交流入力電流波形を観測した。その結果、状態帰還制御を行うと、定常時の交流側入力電流波形が改善されるとともに、出力電流急変時などの過渡時にも入力電流は過渡振動を生じないなど、状態帰還制御の効果が確認出来た。 4. 状態量のうちフィルタコンデンサ電圧を入力電流の微分演算により求め検出器を省略する方式を開発し、検出器を省略しない場合と同等の動作性能が得られることを示した。 以上の結果は交流側電流波形の良好かつ安定な新しい大容量多重PWM整流回路の基礎を与えるものといえる。
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