本研究では、超高圧電力系統の事故時復旧操作を、エキスパートシステムにより自動化する研究を行っている。復旧操作は、初期電源の確保、送電系統の充電、発電機の起動・並列、負荷への電力供給などの各段階から成っている。本年度は、負荷への供給が進むにつれ、送電設備に発生する過負荷について検討を行った。以下に研究結果をまとめる。 まず、検討の対象としている超高圧系統について、送電線および変圧器の具体的な送電容量を調ベ、オブジェクト形式で記述した系統データに追加した。そして潮流計算により送電線および変圧器に流れる電力量を算出し、これを該当設備の容量と比較することにより過負荷の有無を検出できるよう機能拡張を行った。つぎに文献調査により、過負荷の解消法について調ベた。解消法には系統切替、発電調整、負荷切替、負荷制限などがあり、これらをメソッドとしてシステムに組み込んだ。また、設備過負荷時に適用する具体的な方法は設備ごとに異なるので、設備ごとにルールを設けて個別に対応するものとした。例えば、ある送電線の過負荷を負荷切替えにより解消するには、下立系統の変電所負荷をどのように切替えるかの知識が必要であり、これは送電線によって異なる。最後に対象系統が全停電となった状態からの復旧操作をシミュレーションにより検討した。その結果、送電線1回線や変圧器1台が使用できないような状況下では、過負荷が発生することは稀であることが判明した。また、仮に過負荷が発生したとしても、本エキスパートシステムに組み込んだ機能により解消することができ、さらに負荷制限にまで追い込まれることは検討の範囲内では起こらなかった。以上により過負荷の解消については所期の目的を果たしたと考えている。 今後は、潮流計算だけでなく、安定度計算プログラムなどもシステムに組み込み、平常時操作についても検討を行っていく計画である。
|