研究概要 |
超高圧交流送電線の電気的環境問題の中で、特に人体に対する電磁界のカップリング現象に注目が集まっている。よく知られているように,送電電力は送電線周囲空間を使って送られており,送電線下の地表面近傍にも電気エネルギーの流れが存在するが、大地に直立した人体の周囲および内部での電気エネルギーのながれは未だに明らかにされていない。 本研究ではまず,(1)送電線下の地表面近傍における電気エネルギーの流れを電界・磁界の強度および位相特性を基にしてボインティングベクトル解析により明らかにし,次に,(2)そのようなエネルギーの流れの中に位置する人体の周辺および内部のエネルギー分布を解析する.このような研究を行うことによって電力周波数の電磁界の人体影響を新しい角度から考察することを最大の目的にしている.本研究より次の結果が得られた. 1.500kVおよび187kV送電線の周囲空間における電界および磁界の強度・位相特性の解析を線路電流1,000A,負荷力率1.0として行い,さらに周囲空間の有効電力密度(W/m^2)をボインティングベクトル解析から求めた. 2.送電線下の地表面近傍におけるボインティングベクトルを磁界の水平成分と電界の垂直成分から実験的に求めた結果,計算値とほぼ一致することが認められた. 3.送電線下の地表面に人体モデル(半球,球,円柱状)が直立した場合のモデル外部のエネルギーの流れを明らかにした.また,導電性の人体組織による電力損失を計算した結果,mWのオーダ程度またはそれ以下になった.この事はELF電界が体内に入り込まないことによるものと考えられる.
|