研究概要 |
周波数領域におけるモーメント法でサージ電流を求めることを検討した。アンテナやマイクロ波回路分野で開発されたモーメント法はある範囲における周波数特性を解析対象とするがサージ解析では周波数特性よりは時間特性が重要であり、逆フーリエ変換を必要とするため、数値電磁界解析でサージを解析するには計算時間が問題となることがわかった。しかし、複数台のワークステーションを使用した並列計算を行えば短時間でサージ解析を行うことができることがシミュレーションから明らかになった。 しかし、送電線路のように複雑な回路構成の導体系では本手法を適用するには未だ問題が多いので、線路を4端子回路と考えるモデルを検討した。4端子回路定数A,B,C,Dを受電端短絡、開放の2つの場合について数値電磁界解析によって求める方法を考案した。その結果は線路を多数個に分割するためか4端子定数から求めた特性インパルスや伝搬定数は周波数によって大きく変化した。これを滑らかな曲線で近似する解析関数(s関数)を求め、逆ラプラス変換を使用すれば実測に近いサージ波形が得られることを示すことができた。しかし、この近似関数はsの無理関数になっているため、広く使用されている回路シミュレータEMTPに適用するには難点があることがわかった。そこでEMTPの線路周波数モデルの1つであるJ.Martiモデルに適合するようなpade近似を行ったところEMTPでも鉄塔を含む線路のサージ現象を精度良く解析することが可能であることが明らかになった。
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