研究概要 |
本研究は,筆者らが発明した真空中のロール超急冷法で作製される極薄のCo基アモルファス磁性合金超薄帯の,製造方法(合金組成,熱処理条件)および磁区構造を詳しく検討し,MHz帯の高周波領域での磁心損失の一層の超低損失化と初透磁率の周波数特性を向上させるための指針を得ることを目的として2カ年間実施された。 種々検討の結果,Crを少量添加した零磁歪組成の(Fe-Co-Cr)_X(Si-B)_<100-X>,(x=75-79),(Cr=5-6at%)の試料薄帯が,アモルファス薄帯の極薄化加工と高周波磁気特性(磁心損失および透磁率)の両面で優れていることが明らかになった。さらに熱処理条件を種々検討した結果,幅方向磁界中熱処理を施すと,MHz帯の高周波領域で磁心損失が30〜50%程度さらに低減されることが分かった。 また,Kerr効果による磁区観察の結果,誘導磁気異方性を十分抑制した薄帯については,歪取り熱処理によって数μm〜10μm程度の微細な磁区が多数形成されていることを見出だし、これら磁区が透磁率の改善および磁心損失の低減に寄与している知見を得た。さらに,薄帯幅方向に磁界中熱処理を加えた薄帯では、ほぼ同方向に平行な磁区が形成されていること,組成によって磁区幅が変化することなどを確認した。これら幅方向磁区の細分化がMHz帯の磁気特性の改善・向上に寄与していることが明らかになった。 本研究で得られた高周波領域の磁心損失の最小値は,最大磁束密度が0.1Tで周波数1MHzのとき,700(mW/cc)である。この値は,他の高周波用磁心の1/3〜1/4で,世界最小である。さらに,初透磁率の周波数特性の遮断周波数が数MHzに及ぶものを得た。これは,従来の実用アモルファス磁心に比べ約1桁高いものである。以上述べたように,本研究において,極めて優れた高周波用アモルファス超薄帯磁心が得られた。
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