研究概要 |
本年の研究はQTFSK伝送特性改善の具体策を考案し、その改善効果を評価することである。改善策導入の制約条件としては、無線スペクトルの有効利用のため、改善技術利用後の変調信号のスペクトルの広がりを極力押えることが可能なものでなければならないと言うことである。伝送特性とスペクトル特性の効果的な改善方法としては"符号化変調"が良く知られている。中でもトレリス符号化と組み合わせたトレリス符号化変調は多相PSKと組み合わせて多くの検討がなされている。しかし符号化レート(効率)を小さくとることには困難が伴うので、占有帯域幅を考慮して大きな改善を得るには必ずしも適してはいない。又、移動通信での利用を考慮すると基本的に遅延検波が利用出来る方式であることは重要なファクターである。以上の理由から、本年度の研究ではブロック符号化を適用した符号化変調をQTFSKに応用して遅延検波-ヴィタービ復号(VA)による伝送特性の改善を先ず第1に試みた。用いたブロック符号は原始多項式を生成多項式とした巡回符号であるが、誤り訂正符号化としては用いていない。実際の手法としてはコンピュータシミュレーションをワークステーション(SUN SPARK classic)上にて行った。但し、VAを含まない(同一チャネル間干渉を含む)基本的な伝送特性は1GHz帯のハードウエアシミュレーションで実施している。符号化効率としてはほぼ0.9を設定値とし、(10,9)〜(35,33)までの各種符号長についてガウス雑音下における改善度を明かにした。これらの符号化変調を適用した場合の(誤り率10^<-3>における)Eb/N0での改善度は1.5dBから3.5dBである。符号化のみの改善には上記のように限度があり、一層の改善を達成するためには、観点の異なるアイディアを導入することが必要である。そのための方法として送信帯域制限用フィルタによって生じる符号間干渉をキャンセルするMLSEを用いる方法を第2の問題として取り組んだ。ここで用いたものは当該シンボルを含んで3シンボルの符号間干渉パターンをメモリーとして用いMSLEをVAにより行う方法である。この方法を開発したことにより、(10,9)と言う簡便な符号化によってもナイキストフィルタを用いたQDPSKと殆ど等しい伝送特性を達成することが出来た。この結果は勿論符号化効率を考慮した(実質の)Eb/N0での改善度である。
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