研究概要 |
本研究による成果は四つに大別できる.第一は,エンド・ツー・エンドの軽量プロトコルを研究する準備として行った高速MACプロトコルの研究である.このプロトコルとして,DQDBとスロットリングを取り上げた.各端末が複数パケット分の有限送信バッファを持つという条件の下で,平衡点解析の手法を用いて,各端末のスループット,平均パケット遅延などを求めた.第2の研究は,LLC,ネットワーク,トランスポートの3層を一つの層に縮退した単一の軽量エンド・ツー・エンドプロトコルとMACプロトコルとを組み合わせた2階層プロトコルのモデル化・性能評価である.この軽量プロトコルは,コネクション確立・解放をimplicitに行うものである.MACプロトコルとしてTDMA予約を用いた衛星ネットワークと,スロットリングを用いたLANの二つについて,平衡点解析の手法により解析モデルを構築した.プロトコルの各種パラメータがシステム性能に及ぼす影響を明らかにするとともに,この軽量プロトコルの従来プロトコルに対する優位性を定量的に示した. 第3の研究は,高速ネットワークに適したフロー制御方式であるレートベースフロー制御の性能評価に関するものである.時変トラヒックに対するこの方式の性能をシミュレーションにより評価した.特に,受信端末におけるバッファ占有量がしきい値を越えた時と下回った時に,送信端末のパケット送信間隔を動的に変化させる方式について定量的に検討を行った.第4の研究は,高速軽量プロトコル設計の基礎データを収集する目的で行ったFDDI LAN(100Mbps)による実験である.このLANにおいて,トランスポートプロトコルとして,TCPとUDPを用いた場合の,それぞれのメッセージ遅延時間を測定した.この測定によって,既存プロトコルを高速ネットワーク上で用いた場合のオーバヘッドを定量的に調べた.
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