散乱体内部に微小電流素片であるダイポールを多数配置し、その散乱界の線形和で散乱体内外の散乱電磁界を表現する等価ダイポール法を用いて3次元電磁波散乱問題の解析を行なった。まず、本法の3次元問題に対する有用性を検証するために解析の容易な軸対称形状の有限長円筒導体ならびに誘導体を取り上げ、その散乱断面積および散乱波パターンを求めた。解析に際しては、円筒面エッジが解析精度に与える影響についても詳細に検討し、導体の場合、曲率半径が0.2波長より小さくなるとエッジの影響が現れはじめ、解析精度が低下することが明かとなった。一方、誘導体の場合には、そのような傾向は顕著でなかった。また、散乱断面積についてはXバンドで実験を行ない、理論値と測定値がよく一致することを確かめた。次に、円筒形状が偏平あるいは細長くなると計算効率の低下が見られたので、その改善のために2つの方法を提案した。1つは円筒の径が波長に比して大きい場合に有効な対称座標法に基づく多相多方向入射法、他の1つは細長い円筒形状に有効な2次元的近似法であり、いずれの方法についても数値計算により、その有用性を確かめた。特に、後者の方法は有限径を有する線条アンテナの解析に容易に適用できることから、給電ギャップを持つ有限径半波長アンテナの特性を本法により詳細に検討した。その結果、給電ギャップ間隔やアンテナ径が波長の100分の1程度のオーダーになれば、入力インピーダンスやギャップ間の開放電圧値にそれらの影響が現れることを明かにした。最後に任意形状3次元物体の一例として導体エッジを多数含み解析が困難と見られる角柱導体(立方体)を取り上げ、その散乱断面積および散乱波パターンを求めた。散乱断面積についてはXバンドで実験を行ない、理論値と測定値のよい一致を確め、等価ダイポール法が任意形状3次元物体にも十分に適用可能であることを検証した。
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