研究概要 |
離散アルゴリズムの研究は,実用面からのみでなく理論面からも精力的に実行されてきた.最近は,並列性を考慮した並列アルゴリズムの観点からも研究が行われている.従来,離散アルゴリズムの効率化で用いられている基本技法は,データ構造の工夫と数理計画法的手法の工夫であるが,両者の研究は独立的に実行されてきた.そのため,より効率化の可能性があるにもかかわらず,解決できない問題も多かった.これを打開するためには,データ構造と数理計画法の技法を有機的に融合した統一的手法が必要であると認識されてきている. 本研究は,この点に注目して,データ構造と数理計画法の技法を有機的に融合した手法を研究調査し,それに基づいて効率的離散アルゴリズムの研究開発を行うことを目的としている.目的を達成するため,まずネットワーク問題の代表的問題である最大フロー問題,最小費用フロー問題,最大重みマッチング問題に対して,最新のデータ構造と数理計画法の技法を融合した解法を詳細に検討した.より具体的には,最大フローを求めるGoldberg-TarjanのΟ(mnlogn^2/m)の手間のアルゴリズム,最小費用フローを求めるOrlinのO(m(m+nlogn)logn)の手間のアルゴリズムおよび最大重みマッチングを求めるGabowのO(mn)の手間のアルゴリズムなどを通して,データ構造と数理計画法の技法を融合した解法の特徴を調査検討した.また,関連する離散問題に対しても,情報の構造を最大限に活用し,逐次的なアルゴリズムおよび効率的並列アルゴリズムの研究開発を行った.もちろん逐次アルゴリズムについては理論的解析だけではなく,従来の手法が存在するときにはそれも含めて計算機比較実験をし,それを通して提案するアルゴリズムの実際的性能を評価・検討することが大切であるので,それも併せて実行した. 本研究を通して得られた成果は,電子情報通信学会,情報処理学会,およびInternational Journal of Computational Geometry and Applicationsに掲載されている.また,いくつかは世界的に権威ある雑誌に投稿中である.以上の点から,当初の目的はかなり達成されたと思われるが、さらに作成した膨大なプログラムも含めて整理し,よりきちんとした形式で,データ構造と数理計画法の技法を融合した統一的手法の有用性を確立し積極的に普及に努めていく.
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