研究概要 |
本研究は,劣化したコンクリート供試体の圧縮載荷時におけるアコースティックエミッション(AE)特性を調べる事によって,コンクリートの内部構造の状態を明らかにし,健全なコンクリートと比較し,さらに,従来から行われてきた実験室での劣化の進行試験における膨張量,動弾性係数,ひびわれ特性といった評価パラメータと対応することによって劣化の評価を行っていく方法の確立を目的としている. 本年度は,昨年に引き続き,凍結融解作用の繰り返しおよびアルカリ骨材反応がコンクリートのAE発生特性に与える影響について実験を行った.その結果,6%程度の空気を導入したAEコンクリートでは,凍結融解作用を相当回数繰り返しても,AE発生挙動にほとんど変化が認められず,昨年度行ったプレーンコンクリートのように載荷初期に大量のAEが発生する現象は見られなかった.アルカリ骨材反応においても劣化が進行するにつれて載荷初期に多くのAEが発生する同様の現象が認められた.以上のことからコンクリートの劣化が進行した場合,非常に低応力状態で多くのAE発生が見られることから,内部に非常に不安定な領域が形成されていくことが推測される.この領域は低応力で一通りの破壊が終了し,応力再分配を経て最終的に破壊に結びついていくひびわれの連鎖過程は同程度の強度を有するコンクリートとほぼ同じであると考えることが出来る.このようにAE発生挙動を測定することによって,コンクリートの劣化のメカニズムがある程度把握,推定できることが明らかになった.今後,さらに多くの劣化要因におけるデータ,さらにより精度の高いAE観測によってより具体的な劣化の評価手法として発展させられる可能性がある.
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