研究概要 |
本研究は,同じ異常渇水流況に対する被害の程度が河川水の利用率の高低により異なり,社会的に不公平となっている点を問題とし,利水用貯水池をもつ河川水系(貯水池系)における潜在的渇水被害度を河川水利用率をパラメータとして把握・表現する方法と共にその共通の尺度で表される被害度の生起確率の評価法を確立し,渇水対策ダムの合理的計画等に資することを目的とするものである。 今年度は,昨年度の検討により,渇水被害度指標として確率評価上,簡明さ及び非金銭的指標の点から不足%・日を第一候補とした前提のもとに,実際のダム流域における流量資料に基づいて次のような解析・検討を行った。なお,流量資料は豊川水系宇連ダムへの自流域(A=26.26km^2)からの日流入流量時系列で,1970-1992年の23年分である。 (1)日流量の統計解析(日流量の統計的特性および長期(30〜360日)移動平均流量の極値分布解析) (2)河川水利用率(平均流量に対する取水流量の%,年間一定)α=20〜50%に対する年最大必要貯水池容量(残差マスカーブ法により算定)の分布特性解析 (3)交差レベルをα=20〜70%に相当する流量とした日流量時系列の連解析(正および負の連長,連和の分布特性・極値分布解析,負の連和は不足%・日と一義的に対応) (4)渇水被害度指標の貯水池容量,河川水利用率,節水ルール(無節水または貯水量率に基づく節水率変化方式)による変化特性の検討 主要な成果は次のようである。(1)年最小長期移動平均流量,年最大必要貯水池容量はGumbel分布にほぼ従うようであるが適合度はあまり良くない。(2)年最大連長,連和は正負ともGumbel分布によく適合する。(3)渇水被害度指標を不足%・日とすると,無節水操作の場合が常に最小となる。(4)渇水被害度指標を(不足%)^n・日とすると,河川水利用率に対して貯水池容量が過大または過小の場合を除いて節水操作の方が被害度が小さくなることがある(節水ルールにも,指数nにも依存し,今回設定したルールではn(〕 SY.gtoreq. 〔)3のとき)。
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