研究概要 |
夏季の浦の内湾では,底層部や亜表層部で強い貧酸素水塊が発達し,しばしば養魚の大量斃死が生じている.本研究では底層および亜表層部の大規模な貧酸素化の原因とメカニズムを調べた. 底層部の貧酸素化は密度成層の発達する6月から9月にかけて形成され,例年7月下旬と9月上旬の大潮時には,湾外水の差込みが生じてDOが補給されるため貧酸素化は一時的に解消される,しかし,この時底泥表面の還元物質や栄養塩を大量に巻き上げ水質を著しく悪化させる. (2)貧酸素化が進行すると,硫化水素が溶出する.硫化水素は溶出量の倍の酸素を消費するため,底層の貧酸素化を加速する. (3)G.nagasakiense(鞭毛藻プランクトン)は底層部の貧酸素化の進行とともに中層部で増殖がみられ,差込みが発達すると表層部で赤潮を形成する. (4)1988年9月上旬,1993年8月および9月中旬,11月上旬に,水面下1〜6mの亜表層部で3ppm以下の強い貧酸素水塊が生じた.亜表層部の貧酸素化は,天候の悪化が続き日照時間が極端に低下した直後から始まった.貧酸素化の初期には,鞭毛藻プランクトンによる赤潮がみられ,湾外水の差込みが発達していた. (5)鞭毛藻プランクトンは日中表層に分布するが,日没とともに水面下8〜15mまで降下し,亜表層から中層でかなりの酸素(DO)を消費する. (6)亜表層部のDO濃度は海水中での生産と消費に支配されており,鉛直混合や差込みによるDO補給の影響は比較的小さかった.日照時間が減少すると,亜表層部の生産速度は晴天時の1/3程度まで減少する.一方,海水のDO消費ポテンシャルは減少することはなく,むしろ,鞭毛藻プランクトンの夜間降下による亜表層部でのDO消費が加わるため,DO生産を大きく上回り急激な貧酸素化が生じる.
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