本研究は、路車間情報システムを通じて動的な交通情報が車両に提供され、車両は目的地までの最短時間経路へ誘導されることを前提としている。すなわち、経路誘導のためのダイナミックな情報は道路区間ごとの混雑に関する情報だけであることを想定している。従来の経路誘導に関する研究では、道路区間ごとの走行所要時間が経路誘導情報として使われる場合が考えられていた。そこで、本研究においてもこのケースを中心に、次のような検討を行った。 これまでは、誘導の有無に関わらず全車両の区間別走行所要時間を一定時間ごとに平均し、経路誘導情報として使っていた。これは必ずしも現実的ではないため、誘導を受ける車両だけから路車間情報システムによって走行所要時間が報告されるケースを設定した。この場合、誘導率が低ければ少ない車両からのデータしか得られないために、交通情報の精度が悪くなると考えられる。つぎに、全車両の走行所要時間のデータを集計するが、車両から地上側へ報告するときに人為的に誤差を与えた場合を設定した。さらに、人為的な誤差は与えないものの、走行所要時間を分単位のように丸めて報告する場合も設定した。 これらの設定したケースに関して誤差の大きさ等を変えてシミュレーションを行ったが、これまで行っていた全車両からのデータを用いる場合と比べて顕著な相違は認められなかった。すなわち、実施したシミュレーションの範囲では交通情報の精度は経路誘導効果に影響しないということであり、予想とは異なる結果であった。その原因を考えると、モデル化している経路誘導システムが緻密なものでなく、車両の分散のみが効果をもたらし、誘導先の経路の良し悪しが影響していなかったと推測される。これらを考えると、経路誘導システム自体とシミュレーションモデル構築の再検討が課題として残された。
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