研究概要 |
嫌気性固着型反応器での生物膜,グラニュール増殖体形成(自己固定化)における細胞外ポリマーの役割を以下の手法で検討した.(1)上昇流嫌気性スラッジブランケット(UASB)反応器で形成されたグラニュール汚泥から細胞外ポリマーを回収するため,種々の抽出方法(EDTA抽出,水ーフェノール抽出,水蒸気抽出,アルカリ抽出等)による最適抽出条件を検討した.(2)カオリン懸濁液,EDTA振蘯によるグラニュールからの遊離菌体等を凝集基質賭して,上記抽出ポリマー添加による凝集能試験を行った(凝集能試験の最適条件探索).(3)グラニュール汚泥の細胞外ポリマーの存在形態を走査電顕,透過電顕により観察した.(4)EDTA抽出細胞外ポリマーを種々のゲルろ過法を組み合わせて分子分画,精製を行い,各画分の凝集能試験を行い,細胞外ポリマーの凝集誘因物質の単離同定を行った.その結果以下のような知見が得られた.(1)EDTA抽出ポリマー,アルカリ抽出ポリマーは良好な凝集能を示した.いずれもポリマー添加濃度が高くなると凝集能は弱くなり,凝集能発現には最適濃度が在存する.凝集能発現には,多価カチオンの共存が必要であり,Ca^<2+>,Al^<3+>,Ba^<2+>,Mg^<2+>などの2mM以上の存在が有効であった.(2)TEM観察の結果,細胞付着に関与する細胞外ポリマーは,20〜40nmの緻密なglycocalyx様のものと,より粗な繊維状構造のものの,二形態が存在した.細胞外ポリマーはガラクトロン酸を含む酸性糖を含み,その主要中性糖構成はグルコース,ラムノース,ガラクトースであった.(3)細胞外ポリマーはSepharose CL-2Bで分画される糖とタンパクから成る第二画分に凝集能を有し,この画分はさらにSephacryl S-200HRによって分離された糖画分に凝集能が存在した.この多糖成分は分子量20000〜40000の範囲であった.
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